2021年1月はこちらの本をご紹介したいと思います。全米ビジネス書ベストセラーになり、日本では2006年に発売されました「自分の小さな「箱」から脱出する方法“>自分の小さな「箱」から脱出する方法」 Leadership and self-deception getting out of the box.
人は誰しも人間関係で悩んだ経験があるかと思います。私生活から仕事まで、人とのコミュニケーションを通じて、相手が自分に合う合わないも当然のことながら、いわゆる対人経営とも言うべき、本音と建前で人と対話することが珍しくありません。人間は相手の感情を敏感に感じとる能力を持っており、例えば、自分で苦手と思う相手には、その感情が伝わってしまうようです。
本書ではこうした状態を「箱の中」と定義しています。自分が箱の中にいることで、自然と相手も「箱の中」に入れてしまいます。その結果、対人関係の摩擦が増すばかりで、どのようにして、この「箱の中」から出ることができるのか、自己解決が難しくなっていくようです。
主人公は、輝かしい業績を上げているザグラム社に転職して入社1ヶ月後、上級管理職を対象とする研修を受けることになりました。「自分ほど努力してきた人間はいない」と自負していた主人公は、研修の講師である専務副社長のバド・ジェファーソンから、開口一番「君には問題がある」と言い放たれたのです。
主人公は、自分のどこに問題があるのか、誰よりも努力し、実績を積み上げてきた自負がありました。しかしながら、バドは、「問題のある人物自身には、自分に問題があるということが見えなくなっている」と言い放ちます。
人は、相手の本心を敏感に感じとることができます。人は本心で相手をよく思っていないと、結局は反感も持たれるようになるのです。これが相手に対して「箱」の中か外になるのです。相手をモノではなく人間と捉え、相手の立場で気持ちを理解しようとすることは、人は「箱」の外にいることになります。「箱」の外にいる時は、相手の気持ちを考えて、思いやりを持ってちょっとした親切や手助けなど、何かをしてあげたいと思います。しかしながら、人は、他者に対して良かれと思ったことをいつも行動に移すことはできません。本書では、このような自分の気持ちに背く行為を「自分への裏切り」と定義し、「箱」の中に入るきっかけとしています。
人は、「箱」の中では自己欺瞞の状態であり、やがてはそれを自分の性格と見なすようになっていきます。その結果、人は自己正当化が最大の関心になり、視野は狭くなり、それを脅かす相手に対して防御の姿勢をとり始めます。一方で、自己正当化を強化してくれる人は味方と感じるようになります。
人は、誰しも自己正当化イメージを持っています。自分を非難する人がいた場合、防御の姿勢をとって「箱の中」に入ってしまいます。つまり、自分が「箱の中」にいて相手を非難することで相手も「箱の中」に入れてしまうことになります。
会社の目標は組織で業績を上げることですが、人は「箱の中」にいると、自分にばかり目を向け、全体に目を向けられなくなってしまいます。自分のことばかり考えるようになり、同僚の成功を喜ぶことができず、他者と比較して成果を上げようと互いに悪影響を及ぼすようになっていきます。結果として、組織全体で、「箱の中」の人を増やし、組織よりも自分中心の人が増えていき、会社の業績を上げて行くことが難しくなって行きます。
では、どうすれば、この「箱」から脱出できるのでしょうか?意識してできることではないかもしれませんが、ちょっとしたきっかけで人は「箱」から出ることができるようになるのです。自分が「箱」から出ることで、他者も「箱」から出てくるのです。
より良きビジネス、人間関係、家庭生活のために、時には自分は今、箱に入っているのではないかと疑ってみることが大切ですね。今起きている目の前の問題を引き起こしているのは、実は自分かもしれません。